日本料理 e.

 

第四回

【季節とごはん】 (文・岡﨑 彩 写真・菊池元樹)


ふたを開けると湯気とともに、
食欲をくすぐる芳香が立ち上る。

御馳走の締めくくりにふるまわれるごはん。
食客のタイミングに合わせ土鍋で炊きあげられ、
具の旨味がごはんの一粒一粒にしみわたる。

用いられるのは店主が見初めたこの時季だけの食材だ。
青果や鮮魚、海産物。

とにかくいいものに出会いたいからと、
仙台朝市に出向き、海のものや山のものを見て回る。
季節感を大事にするという想いが込められている。

サクラマスやあさり、春風がまな板へ運び込む旬の味。
季節の訪れを予感させる豊穣な味覚を心待ちに。

食べきれなかったごはんは手土産としてにぎってもらう。
表に出るころには深い充足感に包まれる。


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