第二回
【火入れの話】 (文・岡﨑 彩 写真・菊池元樹)
日本料理を礎とするe.のお料理には、
フレンチの技術が重なっている。
なかでも特徴的なのが火入れ。
肉にふれタイミングを決めて、火入れがはじまる。
表面をしっかりと焼いたら、
ポワレ(加熱)とルポゼ(休める)を2時間ほど繰り返す。
「一度に火をいれないことで、
肉にかかるストレスを軽減する」と店主。
時宜にかなった加熱は、
長く積まれた経験に由来する。
余熱を肉のすみずみまで行き渡らせるため
肉質はとてもやわらかだ。
仕上がりは、内側まで火が通っているのに実に瑞々しい。
包丁を静かにいれるとあらわれる鮮やかな深紅。
一口ふくむとふっくらとし、
幸せな滋味がほとばしる。