第一回
【二枚扉の理由】 (文・岡﨑 彩 写真・菊池元樹)
青葉通りから細い路地に入ると、
街なかの喧騒が静まる。
わずかに歩けば現れるのが
日本の伝統建築を彷彿とさせる白壁、
西洋の風情を漂わせた二枚扉。
一見して相反する要素が、
上質さと美しさのバランスをとりながら共存している。
遊び心を加えた日本料理を創る|。
板前修業を積みそう考えるようになった。
のちにフランス料理店で学びこのお店を開く。
瀟洒(しょうしゃ)な入り口のしつらえには、
店主の心奥が反映されているのだ。
向かいの緑水庵庭園には晩秋からほんのり色づく広葉樹。
冬になれば葉末にうっすらと雪が積もる。
深い緑の合間から陽が差し込み、
白色のスクリーンに映り込むのは木立の影。
これから、いい季節がやってくる。